
経営者・財務のための資金繰り改善ガイド
会社の経営において、資金繰りは永遠の課題。日頃から改善しようと、苦労していませんか。しかしその方法は数多く、なにをしたら良いのか分からないこともありますよね。
そこで、この記事ではすぐにできる資金繰りの改善方法7つを紹介していきます。
資金繰りを改善しよう!今すぐ始める7つの方法
企業経営において、一時的に資金繰りが悪化してしまうことはよくあります。問題はどのような方法で資金繰りの改善をするか。そのときに資金繰りの改善方法を知っているのといないのとでは、大きな差があります。
そこで、ここではすぐに資金繰りが改善できる7つの方法を紹介していきます。
1. 支払を延期する
改善方法
仕入先や外注先への支払いを延期する。
ポイント
仕入先や外注先との関係によりますが、支払い期日の延期はできます。その場合、単に延期するだけでは相手に何も得はないので応じてもらえるように対価を用意しましょう。例えば、支払額の増額などです。
この方法を実行する際に気を付けたいのは、仕入先や外注先との力関係です。もし仕入先や外注先が重要な取引先なのであれば、支払の延期は無理にしないほうが吉。場合によっては、「貸倒リスクがある取引先」とみなされてしまい今後の取引が見送られる可能性があります。
また、仕入先や外注先を現在より良い条件で別の業者に切り替えてしまうのも手です。現在より支払サイトの長い契約を組むことができれば今後の資金繰りの改善にも繋がってきます。
2. 在庫を処分する
改善方法
不要な在庫を処分し、売却代金を得る。
過剰在庫を処分することで、費用削減する。
ポイント
過剰在庫は人件費、場所代、光熱費など無駄なコストがかかり、資金繰り悪化を引き起こす種。たたき売りでも良いので過剰在庫は今すぐ処分しましょう。
また、在庫の管理方法を変えましょう。過剰在庫にならないために必要なのは分析。売れる商品、売れない商品で分けることはもちろん、いつ何個売れるのか、返品率など分析をしましょう。
そして「死筋の商品は一定期間で処分する」といったルールを決めておくことで過剰在庫を防ぎ資金繰りを改善することができます。
3. ファクタリングを使う
改善方法
売掛債権を売却することで、早期に資金化する。
ポイント
ファクタリングは、売掛債権を売却することで期日前に資金化する仕組みです。借入とは違い売却なので負債にならない、最短即日~3日で資金調達が可能といったメリットがあります。以上の点を考えると、一時的に資金繰りを改善することにおいてかなり優秀な方法だと言えます。
また、ファクタリングの審査の際に主に見られるのは売掛先の支払い能力。そのため、赤字や債務超過があっても利用することができます。
4. セール&リースバックを使う
改善方法
設備機器や不動産を売却し、リース契約をし直す。
ポイント
設備機器や不動産の売却代金を資金繰りの改善に充てることができます。売却したものはすぐにリース契約するので実務にほとんど影響を出さずに資金繰りの改善ができます。
5. 不要な資産を売却する
改善方法
会社が保有している不要な資産を売却し、資金化する。
ポイント
使っていない投資物件や設備機器、株式など資金繰りに困っている会社ほど不要な資産を持っていることがあります。資金繰り改善のために、持っていても意味のない資産は売却しましょう。
6. 借入金の返済条件を交渉する
改善方法
借入をしている金融機関と交渉し、返済期間を延期する。
ポイント
銀行融資やその他のローンの返済条件を変更してもらうよう交渉する資金繰りの改善方法です。交渉によっては金利の引き下げもできますが、一時的な資金繰りの改善をするのであればリスケ(リスケジュール)が有効です。
リスケは、返済期間を先延ばしにしてもらうことです。最長で1年間延ばすことができます。リスケの交渉の際には、銀行に合理的な経営改善計画を提出する必要があります。
7. 貸付金・仮払金を回収する
改善方法
会社が貸し付けているお金を回収する。
仮払金を回収する。
ポイント
資金繰りが悪化してしまっている会社を見ると貸付金や仮払金が回収できていない状態を多く目にします。そもそも、貸付金・仮払金は長くても2ヶ月程度で回収しなければならない科目。
特に役員への貸付は見栄えが悪く、銀行など金融機関の融資審査で引っかかってしまう可能性があります。帳簿上で見ると役員が会社のお金を私的利用しているように見えてしまうのが理由です。
一時的な資金繰りだけでなく今後にも響いてしまうので今すぐ回収しましょう。
以上7つが即時性のある資金繰りを改善する方法です。この方法を知っていれば資金繰りが悪化しても対処することができるでしょう。しかし、上記7つはあくまで一時的に資金繰りを改善する方法。慢性的な資金繰りを改善することはできません。
そこで、以下では慢性的な資金繰りを改善する15の方法を解説していきます。
慢性的な資金難を解決!長期的に黒字化する15の方法
慢性的に資金繰りに困っている会社を今まで数多く見てきました。会社を経営するにあたって自転車操業が強いられる場面もありますが、それが慢性的に起こっていると企業体力がなくなりいずれ倒産してしまうでしょう。
そこで、ここでは慢性的な資金難を改善していく15の方法を紹介していきます。
1. 売掛債権の未回収を防ぐ
改善方法
与信審査・管理を徹底する。
債権回収のルールを決める。
ポイント
実は多くの会社が回収率100%ではありません。取引先の倒産や取引先の担当者が忘れている、など様々な理由で未回収が発生しています。少しでも回収率を上げるためのルール作りをすることが大切です。
・既存顧客の与信管理を行い信用度が下がった場合、取引を見合わせる。
・支払期日を過ぎても入金がない場合は、催促の電話をする。
このようなル―ルを策定しておくことで、未回収率を下げ資金繰りを改善することができます。
2. 回収期限・支払期日を徹底的に交渉する
改善方法
既存の顧客からの代金の回収期日を早める。
既存の仕入先への支払期日を遅らせる。
新規の顧客からの回収期日を現在より早く提示する。
ポイント
既存顧客の支払サイトを短縮してもらう、新規顧客には支払サイトを早く設定するなどの対策ができます。既存顧客に支払サイトを早めてもらうのは難しいですが、すべての取引先の支払サイトを早める必要はありません。
取引先が100社ある場合そのうちの10社でも支払サイトが早まれば資金繰りの改善には充分な効果があります。現在の支払が手形で行われている取引先の場合、銀行振り込みに変えてもらう方法も有効です。手形の支払サイトは最長で180日、資金繰りの悪化の原因になります。それができなかった場合、手形割引やファクタリングを利用するのも良いでしょう。
また最も支払サイトを早める方法は、前入金にすることです。商品やサービスを提供する前に代金をもらっていれば資金繰りは悪化しません。
3. 利益率を向上させる
改善方法
商品の単価を上げる。
原価を下げる。
利益率の高いものを優先して売る。
ポイント
商品やサービスの利益率を上げることで、慢性的な資金繰りの改善をする方法。商品の単価を上げた場合、売れる数が変わらなければ利益のみが増加します。しかしこれはもろ刃の剣。値上げをして売上が減少してしまった例は数多くあります。売れる数が変わらないことが前提です。
原価を下げる場合は、使う材料を変える、現在より安い条件で契約できる仕入先に変える、といった方法があります。最近では、商品の値下げをせずに内容量を減らす方法も原価を下げるために使われています。
また、利益率の高いものを優先して売ることで会社全体の利益率を上げることができます。
このように、より利益率が高いものに注力することで会社全体の資金繰りの改善に効果があります。
4. 販売を委託する
改善方法
販売代理店を活用する。
成果報酬型の広告を利用する。
ポイント
販売代理店を活用することで、資金繰りを改善することができます。自社で営業部隊を用意する必要がなくなるので、人件費と教育にかかる時間と費用を削減することができます。
また、販路を拡大することができるというメリットもあります。規模の大きい販売代理店と契約できれば瞬時に全国展開することも可能です。
その一方で勝手に商品の値下げをされてしまったり、離反され販売代理店が独自商品を開発してしまう可能性もあります。
成果報酬型の広告は、結果が出なければ費用が発生しないため無駄なコストがかからずに済みます。ただ広告で結果が出しにくい商品やサービスを扱っている場合は、そもそも活用することはできません。
5. 非生産部門(管理系部署)を縮小する
改善方法
非生産部門の人員を削減し、生産部門を厚くする。
非生産部門を外注化する。
ポイント
社内における人事部、経理部や総務部などの非生産部門の割合を下げて営業や販促など生産部門の割合を上げることで会社全体の利益率を上げる資金繰りの改善方法。非生産部門からは「人がいないと仕事にならない」と言われるでしょう。
しかし、会社は本来利益を上げることが目標ですから、生産部門の割合を高くすることは必要です。
また、非生産部門を外注化することで人件費を削減することもできます。適した人員の割合で営業することで無駄なコストを削減し、資金繰りを改善しましょう。
6. 営業社員にルールを課す
改善方法
営業におけるルールを明確に決める。
営業の時間管理を徹底する。
ポイント
利益率をあげるなら営業に裁量を持たせないことも重要です。例えば、営業の自己判断で最終価格の提示ができないようにする等。上司が価格の裁量を持つことで、営業は利益率の高い価格で販売することしかできなくなります。
また、営業の時間効率を上げることも重要です。営業利益率50%を超えていることで知られるキーエンスでは、分単位で社員の時間管理をしています。さらに、上長が部下の営業先に挨拶の電話を入れることで「空アポ」を抑止し高い営業効率を維持することができています。
社員の時間管理を徹底することで、営業利益率の向上を図りましょう。
7. 分野ごとの利益管理を徹底する
改善方法
商品、サービス、営業社員、営業部やエリアごとの利益管理を徹底する。
ポイント
それぞれの分野の利益管理を徹底することで、強い部分と弱い部分を把握します。強い分野をより強化し、弱い分野の改善を図ることで会社の利益率を上げましょう。
具体的には、強いエリアで採用している営業手法を弱いエリアでも使ってみる、強い営業マンを弱いエリアに送り込むなどの改善方法があります。
また、改善の余地がない場合すぐに撤退することで余計なコストがかかることを防ぐこともできます。
8. 投資はキャッシュフロー内で実施する
改善方法
投資をキャッシュフロー内に収める。
無理な投資はしない。
ポイント
企業活動において投資は必要不可欠。重要なのは、投資資金がどこから出ているのかということです。銀行融資等の借入で新規事業に投資をした場合、後に資金繰りの悪化を招くこともあります。
キャッシュフロー内に納めていれば、新規事業が軌道に乗らなかった場合でも資金繰り上は特に痛手は被りません。事業拡大をする場合は、無理な投資ではなく堅実な投資で行いましょう。
9. 不要な税金対策をしない
改善方法
意味のない税金対策をしない。
ポイント
中小企業の経営者は、「税金で取られるくらいなら使ってしまおう。」という意識で会社の経営に不要なものを購入していることがよくあります。そもそも、節税をするより税金を支払ったほうが手元に残る現金は多いです。不要な節税は、資金繰り悪化の原因です。
資金繰りに余裕がときに、消耗品を先に発注する、従業員の賞与を増やしモチベーションの向上を図るなどは良い節税のしかたです。
10. 社内預金制度を活用する
改善方法
社内預金制度を使って長期的な資金調達をする。
ポイント
社内預金制度は、文字通り従業員が会社にお金を預ける制度です。会社は銀行から借入をするより安い金利で従業員からお金を借りることができ、従業員は銀行に預金しているより高い金利で預金ができる双方にメリットのある制度です。
この方法を活用することで、長期的に資金繰りを改善していくことができます。
11. 少人数私募債を発行する
改善方法
少人数私募債を発行し、資金を調達する
ポイント
少人数私募債は、50人未満の人に対して有価証券を発行して投資を受ける資金繰りの改善方法です。身内や知り合いの投資家などの縁故者に対して債券を発行します。中小企業が銀行などの金融機関を頼らずに資金を集める方法として活用されています。
12. 借り換えを常に検討する
改善方法
借入をしている金融機関を換える。
ポイント
借入をしている金融機関を換えることを借り換えと言います。より金利の安い借入に換えることで総返済額を減額する方法です。この借り換えを常に検討し、より金利の安い金融機関を探しておくことで無駄な金利を払うことをなくしましょう。
13. 法人カードを活用する
改善方法
経費支払を法人カードにまとめる。
ポイント
法人カードを使って決済をした場合、実際の支払日は最長で90日後。これは、無金利で90日間借入をすることができるようなものです。この支払猶予があれば資金繰りの改善に役立ちます。
また分割払いを選択することで資金繰りが悪化している時でも経費の決済が可能になります。
14. リースやレンタルを活用する
改善方法
設備をリース契約する
ポイント
リースは購入ではなく、毎月レンタル代金を払って設備を使うこと。一般企業では、複合機や車両、設備はリース契約するのが主流です。しかし、長い目で見ると総支払額は、一括購入よりリースのほうが高くつくことがほとんど。
ではなぜリースが資金繰りの改善に役立つのかというと、一括購入する場合お金に余裕がなければ融資によって購入することになります。その場合、リースの手数料より高い額の金利を払うことになります。
また、購入した場合は毎年固定資産税と償却資産税を払う必要があります。設備を導入する際はリースで契約し、資金に余裕ができた段階で一括購入することが最善の方法でしょう。
15. 業務を外部に委託する
改善方法
自社の業務を外部の専門業者に委託する
ポイント
自社の社員で業務を完結させる場合と、外部の業者に委託して完結させる場合のコストを比較して安い方を選択する。企業内のほとんどの仕事は、委託できる時代になっています。資金繰りの改善のために業務を外部に委託する会社も増えています。
一点注意が必要なのは、自社にノウハウを蓄積すべきものや、競合優位性のある業務に関しては外部委託を避けるということ。それ以外は、外部委託を利用してコスト削減に取り組みましょう。
以上が慢性的な資金繰りの悪化を改善する15個の方法です。上記の方法を駆使することで改善していきましょう。
また、資金繰りが悪化してしまうとき、必ずどこかに原因があります。その原因が何なのかをいち早く見つけ出し、対処することが大切です。以下では、会社におけるお金の流れ「キャッシュフロー」について説明していきます。
キャッシュフローを把握して資金難に素早く対応しよう
資金繰りが悪化するとき、必ずキャッシュフローのどこかに問題があります。その問題が起きることを未然に防ぐ、あるいはすぐに対処することで会社の資金繰りを安定させましょう。
そのために必要なのは、会社の中のお金の動きであるキャッシュフローを理解すること。キャッシュフローを理解しておくことで、問題を未然に防いだり資金繰りが悪化したときにどこに原因があるのか素早く究明することができます。
まずキャッシュフローは、キャッシュインとキャッシュアウトから成り立ちます。
キャッシュインは、会社に入ってくる現金や資金の流入のこと。キャッシュアウトは会社から出ていく現金、あるいは資金流出のことです。資金繰りが悪化するときは、キャッシュインが減少し、キャッシュアウトが増加しています。
具体的には、
キャッシュインの減少
- 売上の減少
- 費用の増加による利益率の低下
- 売掛債権の回収遅れ、未回収
キャッシュアウトの増加
- 過剰在庫
- 前払金、貸付金、仮払金の増加
- 仕入債務の早期支払い
- 借入金早期支払い
- 過剰な設備投資
などです。これらを把握しておくことが資金繰りにおいては重要。そのためにできることは、キャッシュフロー計算書を正確に作り管理を徹底することです。キャッシュフロー計算書は営業活動、投資活動、財務活動の3つのお金の流れを可視化するものです。
黒字倒産や資金繰りの悪化を防ぐためにも、開業したての人でもキャッシュフロー計算書を作ることをおすすめします。
まとめ
今回は、即時性のある資金繰り改善方法を7種類、長期的に会社を黒字化する資金繰り改善方法を15種類紹介してきました。
経営において現金は本当に大切です。現金は会社の血液であり、キャッシュフローは会社の血流であるとよく言われていますね。現金がなくなっても、現金の流れが止まっても会社は倒産してしまいます。
しかし、会社を経営していると資金繰りの悪化は必ずと言っていいほど起きます。重要なのは、どう改善するか。正しい方法で会社の資金繰りを改善していきましょう。