
契約増加中!医療機関の資金調達方法である医療ファクタリングとは
ファクタリングには、医療機関だけが利用できる「医療ファクタリング」があるのをご存知でしょうか?
医療ファクタリングは昨今の厳しい病院経営の中、短期的な資金調達や資金繰りの改善が可能であることから、医療機関にとって大変重要な役割を担っています。
2000年頃から医療ファクタリングは増加傾向にありますが、今だに知られていないことが多いです。
そこで今回は、医療ファクタリングの仕組みやメリットなど、簡単にまとめて紹介していきます。
医療ファクタリングができる債権は4種類
医療業界に認知されてきた医療ファクタリングですが、そもそも医療ファクタリングとは、その名の通り、病院や調剤薬局、歯科医院や介護事業者などの医療機関がもつ医療報酬をファクタリング会社が買い取り、早期に資金調達をすることをいいます。
通常、医療機関が診療報酬を現金として受け取ることができるのは約2ヶ月後です。
診療報酬のうちの7割が2ヶ月後に入金されますので、その間は患者が支払う3割の診療報酬のみで運営していかなければならないという厳しい現実が医療機関にはあります。
そんな医療ファクタリングには4つの種類があります。
- ・医療機関の診療報酬に対するファクタリング「診療報酬債権ファクタリング」
- ・歯科医院の診療報酬に対するファクタリング「歯科診療報酬債権ファクタリング」
- ・介護事業者の診療報酬に対するファクタリング「介護報酬債権ファクタリング」
- ・調剤薬局の調剤報酬債権に対するファクタリング「調剤報酬債権ファクタリング」
それぞれの特徴について詳しく見ていくことにしましょう。
診療報酬債権ファクタリング
診療報酬債権ファクタリングは国の機関である国民健康保険や健康保険組合と、医療機関、そしてファクタリング会社との3社間で行われます。
基本的なファクタリングの仕組みは一括ファクタリングと同じです。
- 医療機関とファクタリング会社が債権譲渡契約を結ぶ
- 医療機関は、ファクタリング会社を利用した旨を国保や協会けんぽに通知
- ファクタリング会社が医療機関に支払う
- 医療機関が国民健康保険団体連合会(国保連)に請求を行う
- 国民健康保険団体連合会(国保連)がファクタリング会社に支払う
ファクタリング会社は、買取額の7割から8割の金額を医療機関に支払うために診療報酬明細(レセプト)に不備がないか、架空請求はないかなどの審査をします。
国民健康保険団体連合会が債務者ですから、すべてのレセプト債が審査に通ると考えてよいですが、ごくまれに審査に通らない診療報酬明細もあるようです。
>>診療債権ファクタリングについて詳細はこちら
歯科診療報酬債権ファクタリング
歯科診療報酬債権のファクタリングも、基本は診療報酬債権のファクタリングと同じ流れです。
現在の歯科医院を取り巻く環境は悪化しています。
「コンビニより歯科医院のほうが多い」と言われており、経営破綻する歯科医院も増えています。
勤務医だった歯科医が独立開業するため都会では競争が激烈。
逆に地方では人口が減っており、思うように患者を獲得することができず歯科医院を畳むことも多いです。
また、歯科医院を開業する際には設備投資に資金がかかり、自己資金でまかなえる医師は問題ありませんが、ほとんどの歯科医は日本政策金融公庫などからの融資によって準備することも多いのです。
診療を始めてみたものの患者数は思うようには増えず、診療報酬の7割の入金は約2ヶ月後ですし、融資の返済もしなければなりません。
歯科診療報酬債権ファクタリングは、このタイムラグを早期に改善できる最善の策となるのです。
介護報酬債権ファクタリング
介護報酬債権のファクタリングも、診療報酬債権のファクタリングと流れは同じとなっています。
介護事業者の頭を悩ませる原因は、診療報酬の9割が約2ヶ月後に入金されますので、資金不足になってしまうことにあります。
また、福祉車両などの設備投資にもお金がかかります。
通常7割の診療報酬債権に比べると、介護診療報酬は9割という高い割合も事業者にとってネックとなっているのです。
介護事業をはじめて間もない事業者や多くの介護職員を雇用している事業者にとって、早期に介護報酬債権を現金化できるファクタリングは非常にニーズが高いといえるでしょう。
調剤報酬債権ファクタリング
調剤報酬債権のファクタリングも、診療報酬債権のファクタリングと流れは同じです。
薬剤料、医療材料費、薬剤技術料などがこの調剤報酬債権ファクタリングを利用できます。
薬局は、国の政策として院外処方箋を発行するように推し進められたことにより、病院のすぐ近くに数件の薬局が並ぶようになりました。
患者側から見れば、治療を受けて処方箋を受け取ったら、早く薬を受け取って帰宅したいと思うはずです。
薬局をなるべく病院の近くに隣接すれば患者を獲得できますが、そうでない場合は経営が厳しくなるでしょう。
調剤報酬債権も診療報酬債権と同じく、報酬の発生から入金まで2カ月近くかかります。
その間も人件費などの事業資金は必要になりますので、これらのタイムラグを解消するために調剤報酬債権ファクタリングは利用されています。
医療機関が診療報酬債権ファクタリングをするメリット
医療機関が診療報酬債権ファクタリングをするメリットは、次のようなものがあげられます。
1 資金繰りが改善する
約2ヶ月というタイムラグが解消され、早ければ数日で現金を受け取ることができます。
繰り返し利用することでタイムラグを感じることなく経営することができます。
2 償還請求権がない
償還請求権とは万一債権の回収ができなかった場合、遡ってファクタリング会社が医療機関にお金を請求することができる権利の事を言います。
診療報酬債権の場合、相手は国のため、信用度が高く償還請求権の義務を負うことはありません。
3 ファクタリング手数料が安い
国民健康保険団体連合会(国保連)などの国が間に入りますので、審査に通りやすく手数料も0.5%~2%とかなり安く設定されています。
民間の売掛債権の手数料相場が約20%ですので、その違いは歴然です。
4 3社間を利用しても通知の負担がない
売掛債権の3社間ファクタリングの場合、売掛先に「ファクタリングを利用し、債権を譲渡する」という通知をする必要がありあす。
すると「今後の取り引きをやめておこう」「倒産の危機では?」などど、あらぬ疑いを掛けられかねず、通知の負担が重くのしかかります。
しかし、診療報酬債権の場合は相手が国ですので、通知をしたからといって今後の支払を断られることはありえません。
債権譲渡のデメリットと注意点
医療機関が診療報酬債権ファクタリングをするデメリットは、次のようなものがあげられます。
1 診療報酬の全額を買い取ってもらない
ファクタリングには、掛目が設定されています。
これは最初の契約時に70%から90%を買い取り、のちに国民健康保険団体連合会(国保連)などから支払いがあれば、残りの30%から10%が入金される仕組みです。
全額を一度に資金化できるわけではありませので一つのデメリットと言えるでしょう。
2 診療報酬で得られる資金額には限界がある
医療法で事業を厳しい規定で定められている医療機関は、最大でも2カ月分の診療報酬債権しか請求できません。
3 一度利用すると中止しにくくなる
医療ファクタリングは、継続利用を中止すると診療報酬債権の2~3割しか収入のない月が生じてしまいます。
したがって、その分の資金手当てができていない限り、医療ファクタリングを中止しにくいことに注意しなければなりません。
利用を検討中ならファクタリング会社に相談を
医療ファクタリングを利用する医療機関は年々増加傾向にあります。
確かにファクタリングを利用すればキャッシュフローは改善しますが、金額が多くなればそれだけ手数料分が目減りするでしょう。
病院のファクタリング利用には、まずはファクタリング会社に相談をし、経営の健全化をすすめられるよう慎重に判断することが求められています。