
建設業で資金ショートが起きてしまう理由とは?
建設業とは、建設業法において、「元請、下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいう」と定められている職業です。
建設業を営むためには、29種類の工事の業種ごとに国土交通大臣あるいは都道府県知事より営業許可を受けなければならず、手続き等が複雑です。
そんな建設業は、その事業の特性上、資金ショートが起きやすい事業とも言われています。
そのため、建設業では資金ショートの対策として、ファクタリングが積極的に活用されています。
今回はそんなファクタリングについて、実際に建設業で使用されるケースに着目し、理解を深めていくことにしましょう。
では、まず肝心要の建設業の事業特性から確認していきましょう。
建設業の事業特性
建設業は、発注者からの注文を受け、発注者の注文に基づき個別の建造物を造り、完成すると発注者に引き渡すという典型的な受注請負産業です。
そのため、労働力等を自社で固定的に保有するよりも、工事内容に応じ外部からその都度確保することによって、固定費の抑制と経営の弾力性をもたせて置くことが得策とされています。
専門化・分業化し高度に複雑化した工事に対して効果的かつ効率的な施行をするためにも、こうした取り組みがなされているわけです。
建設業にはこうした独自のシステムが存在していることから、工事期間も建築物に合わせて様々であり、工事期間が一年を超えることも珍しくないので、引渡しまでの期間が長くなる傾向があります。
もちろん、引き渡す時が対価を受け取る瞬間であるため、受注から引き渡しまでの期間はお金を受け取る事ができません。
結果として、建設業は資金繰りが非常に難しくなることは必至の職種なのです。
さらに、建設業は元請会社の下にさらに一次下請・二次下請・三次下請と連なっているため、その関係性の中で一社でも資金繰りが苦しくなり倒産してしまうと、そのさらに下請の会社の資金繰りの影響にも影響を与えてしまい、最悪の場合連鎖倒産が生じることもあります。
以上のような事業特性があるからこそ、建設業においては最もネックとなりうる資金繰りを改善するためにファクタリングが頻繁に活用されているというわけです。
さて、続いては建設業におけるファクタリング適用の流れを詳しく説明していきましょう。
建設業におけるファクタリングの流れ
建設業におけるファクタリングは、基本的に保証ファクタリングです。
ファクタリングを希望する金銭債権の所有者が、ファクタリング会社にファクタリングを希望することを伝えることから始まります。
ファクタリング会社は、金銭債権の所有者の取引先がどのような会社なのかについて信用調査を行い、金銭債権をきちんと回収できるかどうか審査がなされます。
審査を終えると、ファクタリング契約を正式に結ぶことになるため、金銭債権を保証してもらう手数料を支払うことによって、保証が開始されることになります。
建設業なら国から支援を受けられる
国土交通省は、平成22年3月1日から「下請債権保全支援事業」を開始しました。
この下請債券保全支援事業は、平成31年3月31日まで利用可能で、「中小企業・小規模事業者の経営・雇用安定、連鎖倒産の防止」を図ることを目的としています。
具体的に言うと、国土交通省は下請け企業がファクタリング会社支払う保証ファクタリングの保証料を援助して、下請企業が経営悪化に至らないような環境にしようとしているのです。
さらに、この仕組みを利用して資金調達を行ったとしても、保証履行に至ってしまった場合以外は元請企業に保証を掛けていることが知られることはありません。
また、一時下請企業だけではなく、二次下請企業も直接請負関係にある発注企業の保証を申し込むことができる上に、公共工事だけではなく、民間工事も対象となるので積極的に利用すると良いでしょう。
建設業がファクタリングを利用するメリット
上記では、建設業においては資金繰りがなぜ苦しくなってしまうのかについて詳しく説明してきました。
端的に、建設業においては金銭債権の回収までに時間がかかり、その額も非常に大きいことから、貸倒れてしまったときに大きな影響を受けやすいのです。
以下では、まず建設業の資金繰りが苦しくなる具体的なケースを詳しく説明した後で、その対応策としてファクタリングを利用するメリットをわかりやすく解説していきます。
建設業が資金繰りに苦しむケース
建設業において資金繰りが苦しくなる代表的なケースとして挙げられるのは、工期の延期による工事原価の増大です。
建築業界は、どうしても仕事の進捗状況が天候に左右されてしまいます。
途中で追加の作業をする必要が出てきたり、その結果工事のための人員の増援が必要となったりと想定外の事態が発生し、追加の資金が必要となることも珍しくありません。
特に建設業における公共事業では、検査日が終了してからの入金となることが多く、例えば検査日が月末に掛かってしまった場合には、天候や工事の進捗状況に応じて1日、2日検査日がずれこんでしまえば、入金が1ヵ月先延ばしとなってしまいます。
前もって負担しなければならない工事原価が発生する上に、会社の資金を入金よりも前に持ち出さなければならず資金繰りが苦しくなるのです。
二つ目に、工事の先払いによって資金が不足してしまうことが挙げられます。
例えば、通常、工事の施行を開始してからも、請負元からの支払いが行われるまでの期間が長いことが多いため、工事完了後の入金がなされる前に月々掛かるコスト(材料費・人件費)は自社で先払いしなければなりません。
材料費や建築機材のリース料などのほか、下請業者に工事の仕事を依頼する場合には外注費の一部を支払わなければならない場合もあります。
この他にも、現場作業員に対して支払う労務費など、現金で支払う必要がある出費が起きることもあります。
このように、建設業においては、最終的に収支がプラスになるような案件であったとしても、工事期間中に費用が嵩んでしまい途中の収支がマイナスになることが常です。
その結果、自社のキャッシュフローが不足してしまい、資金がショートしてしまいます。
資金繰りが苦しくなってしまう三つ目に、工事の請負元が倒産もしくは資金繰りが苦しいために入金してもらえない場合があります。
例えば、工事は完了したものの、工事を請負った業者からの入金が無いまま倒産されてしまったケースでは、すでに下請け会社には発生した資金を回収できないということ。
その結果、支払いをした分が水の泡となり、自社の資金繰りが悪化してしまうことがあります。
少ない資金力である中小企業・小規模事業者にとっては一時的な資金繰りの改善のための手段としてファクタリングを活用するべきなのです。
以下では、建設業においてファクタリングを活用するメリットについて詳しく説明していきましょう。
建設業においてファクタリングを活用するメリットとは?
建設業において、ファクタリングを活用する最大のメリットは、取引先の倒産・貸倒れリスクを回避できることと、自社において与信管理が不要になるという二点です。
保証ファクタリングを活用すれば、取引実績のない会社に対しても貸倒れのリスクを避けながら新規に取引ができるようになりますし、それに加えてファクタリング会社が自社に代わって与信管理を行ってくれるため、与信管理にかかる事務作業の手間やコストを削減することができます。
工事完成までの期間が長いといった建設業ならではの金銭債権の回収リスクを回避することができるだけでなく、元請が新規取引先という場合には、与信調査のアウトソーシング にもなるのです。
また、取引信用保険とは違い、ファクタリングの場合には、自社が保険対象となる取引先を任意で選ぶことができる点も特徴と言えます。
そのため、支払能力が高いと考えられる会社にはファクタリングを行わず、支払能力が低く、信用能力が低いと考えられる会社にだけファクタリングを行うというように活用できます。
その意味で、ファクタリングの方が取引信用保険よりも柔軟性の高い保証サービスなのです。
ファクタリング活用事例
ここまでは、建設業の事業特性やファクタリングの活用方法、建設業においてファクタリングを活用するメリットなどについて詳しく紹介してきました。
ここからは、建設業に属する事業者が実際にファクタリングを活用した具体的な事例を紹介していきます。
ファクタリングを活用して連鎖倒産を回避!
中小企業であったH社は、大手請負会社からの依頼で工事契約を締結し、発注元の一部業務を担っていました。
しかし、その大手請負会社が倒産してしまったことによって、請負っていた工事契約から入金があるはずだった金銭債権を受け取ることができなくなったのです。
大手請負会社だったため、B社にとっては大口の工事契約であり、その分今期の売上に大きく貢献する契約であったことは間違いありません。
H社は大手請負会社からの委託だったので財政状態も悪くないと考えていましたが、非常に大口の契約で前もって支払う資金も多かったため、念の為ファクタリング会社に相談し、事前にファクタリング会社と保証ファクタリングの契約を結んでおいたそうです。
ファクタリング契約を大手の請負会社が倒産するよりも前に結んでいたおかげで、大手請負会社の経営状況が悪くなっているという事態をファクタリング会社が察知して事前に教えてくれていたので、最悪のケースにも対応できるように自社の準備を整えておくことができました。
さらに、ファクタリング会社が金銭債権の保証をしてくれたため、倒産してしまった大手請負会社からの金銭債権は受け取れなくなりましたが、ファクタリング会社の保証があったおかげで、自社の資金繰りが影響を受けることはありませんでした。
H社のように保証ファクタリングを利用して、貸倒れリスクをきちんと管理しておかなければなりませんね。
ファクタリングを活用してリスクを回避しながら新規事業を展開!
東京オリンピックの需要を見込んで、新規事業を展開しようと考えていたC社。
新しい取引先を開拓して売上を増やしたかったのですが、与信管理など事務手続きの多くの時間がとられるようになってしまっていました。
新しい取引先を開拓しようにもその時の会社の人員では与信管理をすることができない状況が足かせになっていたのです。
そこで保証ファクタリングを利用すると決めたC社は、与信管理をファクタリング会社へと委託することで、社内の与信管理の負担を軽減しながらもより質の高い与信管理が可能となりました。
取引先で貸倒れが生じても、ファクタリング会社が金銭債権の保証を行ってくれるので安心して取引先を拡大することができ、新規事業の展開もうまくいくように。
取引先の信用情報については、適宜ファクタリング会社が連絡してくれるので、取引先の経営状態も把握することができ、長期的な事業計画も立てやすくなったため事業計画通りに展開できたのです。
ファクタリングを活用して資金繰りを改善!
R社は建設業営む中小企業で、民間の工事を受注する以外にも公的機関の入札制度にも積極的に入札を行って事業を展開していました。
事業そのものは順調で、財政状態も良好で前期は黒字。
しかしながら、今期は、多様な取引先と工事契約を結ぶようになり同時進行で様々な工事を進めていたのです。
完成した建築物を納品してから入金までの期間が3ヶ月もあり、翌月に大口の建設工事が入った際には、材料費や外注に関する費用の支払いができない状態に陥ってしまったのです。
また、大規模な案件の工事契約も結んだものの、金銭債権が入金されるまでの期間が長いために、外注先への支払いが遅れ、翌月には資金がショートしてしまう状況で倒産寸前でした。
取引先から仕事の引き合いはたくさんあったことから、先々の売上は見込めていたものの、一時的に支払いが嵩んでしまったために手元資金が無くなった状態だったのです。
資金繰りを改善するために、銀行から融資を受けることを考えすぐに銀行に相談しましたが、設立して間もない会社であったため融資を断られ続ける毎日。
資金繰りがどうしようもなくなり途方にくれていたところ、買取ファクタリングがあるということを知りました。
R社は売掛債権があったのでファクタリング会社に相談すると、債権を譲渡しさえすればすぐに資金を提供してくれるとのことだったので、ファクタリング会社と契約しました。
建設業を行っている中小企業・小規模事業者の多くは、金銭債権は多く持っていても現金が足りないというケースは非常に多いです。
そんなときは買取ファクタリングで金銭債権をファクタリング会社に譲渡することで期日よりも前に資金化することで資金繰りは大きく改善できます。
建設業におすすめのファクタリング会社
会社 | 即日対応 | 買取可能額 | 詳細ページ |
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ビートレーディング | 〇 | 20万~3億 | |
アクセルファクター | 〇 | 30万~1億円 | |
ベストファクター | 〇 | 30万~1億 | |
三共サービス | 〇 | ~1億 | |
ウィット | 〇 | 30~500万 | |
日本中小企業金融サポート | 〇 | 無制限 |
まとめ
建設業は受注してから金銭債権を受け取るまでにかなりの時間がかかるので資金繰りが悪くなりやすい業種です。
自社の資金繰りを他企業に左右されないように、積極的にファクタリングを活用してリスク管理をしていきましょう。